「いいゆめ・ゆし・きぶん。」

イラストレーター佐藤右志の脳内備忘録ブログ

球根

(この文章は2017年1月17日に書いたものです。)

 

唐突ですが、私は球根がすきです。

なんか、かわいい。

ぽこっと丸くて。

手のひらにおさまるサイズも。

仲間みたいな、どんぐりとか木の実とか種とかお豆もすき。

つぶつぶ。丸いこたち。

やっぱり、かわいい。

 

あの小さな粒が土の中に植えられると、お水と光がお手伝いして、いつの間にか、にょきにょき成長して、粒から想像もできなかった不思議な形や美しい姿に見事に変身するのだもの。

 

なんとも愉快!

 

種自体はみんな同じような素朴なかたちだったりするのにね。

すごいな〜と思います。

 

あの小さな粒の中にたくさんの憧れやイメージや情報や計画がぎゅっと濃縮してはいっているのかな?

 

粒の見た夢。

 

その夢を、土や水や光の助けを借りて具現化する粒。

 

なんか、ロマン。

 

秋から冬は、たくさんの球根が出回ります。リコリス水仙・ヒヤシンス・アネモネラナンキュラス

 

そして、球根といえばやっぱりチューリップ。

 

チューリップは、寒くなる前に土に植えて、春の開花を待ちます。

 

球根は、春が来るまで、じっくりと、真っ暗な、ふかふかの土の中で、根をにょきにょき伸ばしながら、たくさんの栄養を蓄えて、ひたすらに暖かくなるのを待っています。

そして、時期がきたら、ポンッと青々とした芽を土の中からひょっこり出します。

 

きっと、球根は、芽を出すタイミングを知っているんだろね。

だから、安心して土の中で冬を過ごしてる。

 

そして、芽を出すと、、、

 

(球根の声)

あ、あったかい…

あ、あかるい…

あ、まぶしい…

あ、きもちいい…

 

のびのび

ぐんぐん

ぽんっ!

 

きっと、こんな感じで花を咲かせるんだろうな。ほっこり。

 

球根は、芽を出すこと、茎を伸ばすこと、咲くことをためらったりなどしないのでしょう。きっと、咲くことが花の定めだと、ミッションなのだと知っているからだね。

 

チューリップは、バラになりたいと思っても、チューリップとしてしか咲けないし、バラはチューリップになりたくてもバラとしてしか咲けません。

 

チューリップは春に咲くけれど、

バラは春と秋に咲きます。

 

春に咲く花

夏に咲く花

秋に咲く花

冬に咲く花

毎年咲く花

一年限りの花

数年に一度咲く花

 

色んな花があります。

全部が完璧なタイミングで、全部が違う花を咲かせます。

 

人も同じなんだろね。

 

いつ、

どこで、

どのタイミングで、

どんな花が咲くのか、

私たちは

本当は知ってるはずなのに、

全く気づいてないから

 

だから、

 

いつ、

どこで、

どのタイミングで、

こんな花が咲けばいいのにと、

憧れて夢を見るのかもしれません。

 

バラがいい、

紫陽花がいい、

桜がいい、

百合になりたいと、

 

春に咲きたい、

夏に咲きたい、

一年中咲きたい、

毎年咲きたいと、

憧れたりするのかもしれません。

 

でも、バラじゃなくて、たんぽぽだったりするかもしれないし、紫陽花じゃなくて、向日葵だったりするかもしれません。それは必ずしも、自分が憧れた花の種類ではないかもしれません。それは花開くまで、咲いてみるまでわかりません。

 

バラはバラでも、赤いバラじゃなく白いバラかもしれないし、つるバラじゃなく、ミニバラだったりするかもしれません。

 

好きか嫌いかはあるかもしれないけれど、どんなお花であっても、比べようもなく、どれも個性的で美しいことには変わりはありません。

 

そう考えると、人も、自分と誰かや、誰かと誰かを比べたりすることは、なんの意味も無いことに思えたりします。

 

だって、そもそもがみんな同じじゃないのだから。咲く花も時期も。

 

毎年咲く花もあれば、

一年に一度、たった1日だけ咲く花もあります。何年かに一度しか咲かないお花もあります。そこに優劣はありません。

 

だから、もし、どうしようもなく自分と誰かとを比べてしまって、自信をなくしたり、落ち込んでしまったり、腹を立てたり、羨んだりしたなら、そういう時は、みんなお花だと思えばいいかもしれませんね。

 

そしたら、自信をなくしたり、悲しくなったり、誰かに腹を立てたり、羨んだりすることは、なんの意味もないことなのだと、気持ちが和むかも。

 

土や水や光の助けを借りて、時に任せながら、それぞれのお花をそれぞれのタイミングで咲かせれば良いのでしょう。

 

なんて、一年で1番寒いこの冬、春に思いを馳せつつ、花になぞらえて思ったのでありました。