「いいゆめ・ゆし・きぶん。」

イラストレーター佐藤右志の脳内備忘録ブログ

一番身近な自然

(*2016年2月に書いた文章です)

自然と向き合う。
自然のなかで暮らす。

そう問われた時、大抵は、木とか森とか山とか川とか海とか、そこに暮らす野生動物とか自然環境保護だったり、都心での緑化とか家庭菜園、ナチュラルライフ的なことを思い浮かべることかと思う。

自然の中に身をおくことは気持ち良いものだけれど、都心近くに暮らしていると、よっぽど意識しなければ、そういう環境に日常的に身をおくことはなかなか難しい。

それに、”本当の自然”のなかで暮らすことは、案外そんなに容易いことではなかったりする。
思うようにいかない不便で不自由なこと、手間がかかることもきっと圧倒的に多いだろう。。
自然ってお手軽ではないのだ。

でも、よくよく考えると、実はそういう環境にわざわざ身をおかずとも、自分はすでに自然の中で自然に向き合って暮らしているよなと思うことがある。

例えば『老い』。

共に暮らす母親に日々接していると、当たり前だけれど『人間は老いるものでそれが自然なんだ』と否が応でも実感する。

だんだん耳が遠くなり、だんだん目が見えづらくなり、だんだん忘れっぽくなり、だんだん歩く足取りがおぼつかなくなり、だんだん体力が落ち、だんだん身体がちいさくなり、だんだん髪の毛が白くなり、だんだん行動範囲が狭まる。

去年は一緒に行けた旅行先が、今年も行けるとは限らない。
ほんのちょっとしたことで衰えが早まる事もあって、もう体力的に無理かもなと、だんだん”できなくなる”ことが目に見えて増えてくる。

もとに戻るとか、良くなることはないので、こちらが受け入れてあわせる意外ないのだ。

確かにその都度、状態にあわせてこまめに生活を見直さないといけないので、面倒だったり不自由に感じることもあるけれど、「まあ〜そんなものだ」といい感じに諦めてしまえば案外喜楽なものだ。

いつもつっこみどころ満載なので、母との日々の暮らしはコントしているようにすら感じる。

案外、年をとるのも悪くないのかもしれない。
それは最も自然なことだから。