昨日は綺麗な満月を眺めるコトができました。
少し湿り気を帯びた柔らかな優しい光をたたえたしっとりとした月明かりに感じられました。
お月様といえば、『竹取物語』
TVでも放映されてましたが、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』を思い浮かべます。
スケッチやクロッキーのような手描きの線のタッチと、水墨画を思わせるような余白を活かした淡い背景。徹底的に手描き感にこだわった素朴な絵で構成された表現方法が、この物語の世界観にピッタリ。
高畑監督はあえて、物語を見る側それぞれの想像力に委ねるために、リアルに描き込み過ぎずに、手描きの線の世界観に拘られたようです。
そして、「木を植えた男」などの作品で有名なカナダのアニメーション作家のフレデリック・バックさん(2013年12月24日没)にとても影響を受けていらっしゃるそう。
フレデリック・バックさんのような手描き感の作品を作りたかったと。
そして、完成した『かぐや姫の物語』を病床のフレデリックさんに見ていただきたいと自宅を1人訪ねられ、一緒に最後までソワァーにくつろぎ手を握りしめながら作品を見られて、数日後にフレデリックさんが亡くなられたという。
以前にTV番組の中で知りました。
誰かへの尊敬と憧れが原動力になり、そうして全身全霊で作り上げた作品が更に誰かの胸に憧れと尊敬の波を起こし新しい原動力となり続ける。
肉体の死を迎えたとしても、精神は誰かに引き継がれて延々と形を変えて生き続けるのだなぁと、このお二人の素敵な交流をみながら、しみじみと感動したのを覚えています。
いいですね。
さて、『かぐや姫の物語』。
私が印象深く感じたのは、劇中で多用された「わらべ歌」と「天女の歌」。
♪~ 鳥・虫・けもの・草・木・花
春夏秋冬連れてこい
春夏秋冬連れてこい
(一部引用しました)
高畑監督が作詞作曲されているそう。
子どもたちが口ずさむ歌詞とメロディーが暖かく牧歌的なかんじで素朴な響きをともなって耳に残ります。ステキな歌ですよね。
でも、印象深いのはやはり「天女のうた」
かぐや姫がふと、憶い出すように口ずさむあの音律が、同じメロディーラインと詩を元にしている「わらべ歌」とは明らかに響き方が違います。
私は音楽に詳しくはありませんが、日本的なあの独特の音律。
ちなみに私は、お三味線で長唄とかにも憧れます。都々逸とか。好きです。雅楽の響きとかも大好きだし、義太夫節なんかも好きです。
遡れば、あの日本的な音律は和歌の披講にいきつくのかしら?
なんとも言えないくらい、胸の奥がギュッとなって、あの歌だけで泣けるんですもの。なぜか。
不思議ですよね。
簡潔な言葉と音の深み。
和歌のようなあの歌には、喜怒哀楽が凝縮されてつまってて、ちょっとした拍子にこちらの感情を溢れださせてしまう不思議な作用を感じました。
「天女の歌」
まわれ めぐれ めぐれよ 遥かなときよ
めぐって 心を 呼びかえせ
めぐって 心を 呼びかえせ
鳥 虫 けもの 草 木 花
人の情けを はぐくみて
まつとしきかば 今かへりこむ